タワマン投資は低層階がねらい目? 新築価格より3割上昇
上層階と低層階、タワマン投資をしている2人の投資事例を紹介
首都圏を中心に、年々竣工が増えているタワーマンション。
株式会社不動産経済研究所が公開した「超高層マンション動向-2020-」によると、2010年以降は全国で30~70棟が竣工されていて、そのうちの約半数を首都圏が占めている。駅前など好立地にあることが多いため、売買・賃貸ともに根強い人気を持つ。また、好立地ゆえに物件価格が下落しにくく、中には高騰する物件もあり、キャピタルゲインを期待して購入する投資家もいる。
一方、タワーマンションは、区分マンションにしては高価格であることや、高層ゆえに大規模修繕費が高くなることなどを懸念し、手を出しづらいと考える人も少なくない。
そこで今回は、実際にタワーマンション投資をしているオーナーに取材。
収支状況や、大規模修繕に向けた追加費用の発生有無などについて聞いた。
1997年以降、タワマンが急増
「タワーマンション(タワマン)」という呼称に法的な定義はないが、一般的には高さ60m以上、20階以上の超高層マンションを指すことが多い。最も初期に建設された高層マンションとしては、1976年に建築された埼玉県の「与野ハウス」が知られている。当時としては最大級となる高さ66メートルの21階建て、約450戸という規模で、日本初のタワマンとも言われる。当時の建築基準法には、後述する容積率の緩和がなかったため、この規模のマンションを建てるには広大な土地が必要であった。
そうした中、1997年の建築基準法の改正をきっかけに、高層マンションを取り巻く状況は大きく変わることになる。廊下や階段、エレベーターホールなど共用部の延べ床面積を、容積率の計算から除外できるようになったのだ。こうして容積率が緩和されたことで、高層マンションの住戸面積が広く取れるようになり、都心部にもタワーマンションが次々と建てられるようになった。
現在では高さ200メートル、地上60階建て級のタワマンも次々登場するなど、高層化が進んでいる。タワマンは上層階になるほど人気が高くなる傾向にあるが、その分、価格も高くなる。そのため、上層階に住むことを一種のステータスと考える人も少なくない。
「タワマン投資に興味あり」は21%
では、タワマン投資に興味を持つ投資家はどのくらいいるのだろうか。楽待新聞編集部が投資家約300人にアンケートを実施したところ、「興味がない」との回答が過半数を占めたものの、21%の投資家が「興味がある」と回答している。
興味があると回答した人に理由をたずねると「価値が上がる可能性がある」「資産価値が落ちないと思う」など、キャピタルゲインや高い換金性を期待する声が大半だった。その他の理由としては「将来自分が住むのもいい」「ステータスを感じる」など、タワマンへの憧れが垣間見える回答もあった。
一方、興味がないと回答した人の理由には「修繕に不安がある」と、築年数経過による修繕積立金の増加を心配する声が多く見られた。
「空室が出ても4日で決まった」
アンケートではプラスの意見とマイナスの意見の両方が見られたが、実際にタワマン投資をしているオーナーはどのように考えているのだろうか。
東京都に住む男性Aさんは、6年前に都内の中古タワーマンションを投資用として購入。その後買い増しを続け、現在は合計6戸を保有している。今回、6年前に購入した1戸目の物件の収支状況について詳しく聞いた。
購入したのは、東京都港区にある大型タワーマンションの上層階。購入当時は築6年だった中古物件で、購入時点ですでに新築価格より1000万円値上がりしていた。
それでもAさんは、最寄り駅から5分の立地と上層階という好条件にメリットを感じていた。利回りは5.0%と1棟アパートなどに比べると高くはないが「銀行に預けておくよりは良い」という理由で購入。
今では同じタワーマンション内で類似タイプの物件が8000万円を超える価格で広告されているそうで、Aさんは「換金性が高いのが魅力だったが、キャピタルゲインも狙えそうな状況だ」と手応えを感じていた。
さらにAさんはその3年後、他に東京都内で新築タワーマンションを2戸購入。購入希望者が多く、抽選で5~6倍の倍率になるほど人気が高い物件だったようだ。物件はともに上層階の1LDKで、価格は4600万円前後、利回りは6%台で運用している。
こちらの物件も新築時より価格が上がっており、現在は同じような部屋タイプの物件が6000万円くらいで販売されているという。
中古も新築も、キャピタルゲインを期待できる物件を購入したAさん。どのような基準で物件を探しているのだろうか。物件選びで重視している条件を聞くと「生活に便利な立地」と答えた上で、具体的に「東京都港区か中央区」「最寄り駅から5分」の2つの条件を挙げた。
「エリアは、私自身が賃貸需要や物件価格の相場を把握している2区に限定しています。最寄り駅からの距離は、他に駅近のタワーマンションが建っても競争力が落ちないようにするため、5分以内と決めています」(Aさん)
現在保有している6戸については「長期入居が多く、ほとんど入れ替えはありません。空室が出ても、早いときは4日で次の入居者が決まることもあり、入居付けには困っていません」と話す。入居者は上場企業に勤めている人や、会社経営者の人など、年収1700万円以上の高属性が多いようだ。
Aさんが所有している物件は、どれも好立地にある上層階。タワーマンションを探している人なら誰もが欲しくなりそうな条件だが、どのように物件情報を集めているのか。
「大手仲介会社から紹介を受けて買っています。ただ、普通に待っているだけでは好条件の物件情報は手に入らないので、関係性を築けるように活動しています。具体的には、最低でも月に1回は各大手仲介会社に訪問か電話をし、希望する条件と、購入予算を確保していることを伝えています。これを3年くらい続けていたら、不動産会社が急いで物件を売りたい時に、紹介してもらえるようになりました。その時に、提示された価格が自分で調べた相場と合っていれば、即決するようにしています」(Aさん)
良い物件情報は業者に流れやすく個人では入手しづらいと言われる中、Aさんは不動産業者に細かく連絡をし、チャンスを逃さないようにしていた。